【報告】【2022.12.17開催】公開シンポジウム2022を開催しました

2023.01.18

名古屋大学フューチャー・アース研究センター 公開シンポジウム2022

「災害と社会」

 

名古屋大学フューチャー・アース研究センター 減災社会部門長 高橋 誠

 

1)趣旨:

自然災害が社会の問題を含むことは半ば常識になっている。しかしながら、災害の発生因に関する議論においては社会的な観点が欠落しがちである。すなわち、同じようなハザードであっても、その災害としての立ち現れ方は社会の仕組みによって大きく異なってくる。そこで今回は、モンゴル・インドネシア・日本における災害対策の取り組みをとおして、災害の発生を社会の問題としてとらえる観点で議論し、減災社会を構想する糸口を探ることを目的とした公開シンポジウムを企画・開催した。

 

2)場所:

名古屋大学環境総合館レクチャーホール + オンライン配信(Zoom)

 

3)日時:

2022年12月17日(土)13:15~16:45

 

4)演題:

「挨拶」

名古屋大学宇宙地球環境研究所教授

名古屋大学フューチャー・アース研究センター長 檜山 哲哉

 

【第1部】

「趣旨説明:自然と社会との二分論を超えて」

名古屋大学大学院環境学研究科教授 高橋 誠

「モンゴルのゾド―天災か人災か」

名古屋大学大学院環境学研究科教授 篠田 雅人

「インドネシアにおけるCovid-19対応:法と政策」

名古屋大学大学院国際開発研究科教授 島田 弦

「南海トラフ地震の社会学―東日本大震災後の高知」

名古屋大学大学院環境学研究科准教授 室井 研二

 

【第2部】

「コメント:パンデミックと減災社会」

名古屋大学大学院国際開発研究科准教授 金澤 玲子

「コメント:河川工学・水文学からみた日本の災害と社会」

名古屋大学大学院工学研究科准教授 中村 晋一郎

 

【第3部】

パネルディスカッション

パネリスト:上記講演者およびコメンテーター

モデレーター:高橋 誠

 

5)共催:

名古屋大学大学院環境学研究科

名古屋大学大学院国際開発研究科

 

6)報告:

大学関係者のみならず、地域社会からも32名の方々にご参加をいただき、シンポジウムは盛会となった。檜山哲哉センター長による挨拶と国際的なFuture Earthの枠組みの紹介、および名古屋大学フューチャー・アース研究センターの取り組みについての紹介の後、モデレーターによるシンポジウムの趣旨説明と名古屋大学から3件の講演が各25分程度おこなわれた。パネルディスカッションでは、それぞれ歴史学と水文学という文理の観点からのコメントやフロアからの質問・コメントに応答するかたちで、大きく以下の3点に関して総合的に討論をおこなった。

 

  • 自然と社会とを二項対立的にではなく相互作用的にとらえるとき、どのような学際的研究をどのようにおこなうことが可能なのか、とりわけ社会科学は自然科学とどのように協働できるのか。
  • 中央・地方政府間対立といった政治的構造や、貧困や無知といった社会的脆弱性の問題は、災害の発生や拡大の要因にどのようにかかわるのか、また、それらに関する学術研究の成果は政府等の政策決定に対してどのように介入できるか。
  • 災害に強いまちとは、住みやすいまちなのか。そのことを考えるために、近代的技術と地域知・伝統知、公共の福祉と私権の制約、防災政策と都市計画との間に指摘される分断をどのように橋渡しするか。

 

7)総括:

これまでの災害と社会の問題に関するシンポジウムでは短期的・具体的な防災対策が話題になることが多かったが、このシンポジウムでは、とりわけアジア諸国や日本において、現代社会の抱える問題や学術研究の役割まで踏み込んで議論するよい機会となった。名古屋大学には、理系部局のみならず文系部局にも、広く災害研究にかかわる研究者がたくさん在籍しており、同じテーマについて一堂に会して議論する機会はこれまであまり多くなかった。このシンポジウムで議論された問題はすぐに結論が出せるものではないが、災害をめぐる学際研究の出発点として、フィールドを共有しながら同じものを異なる観点からとらえ、対話によって相互の違いをすり寄せるという方法を提示できたのではないかと思われる。

名古屋大学フューチャー・アース研究センターは、このようなシンポジウムの開催を通して、こうした対話の「場」を継続的に提供することが期待される。今後は、センターに参画していない部局、あるいは、東海国立大学機構の傘下にある岐阜大学にも参加者を広げていきたいと考えている。

このシンポジウムの結論のひとつである、ときに矛盾したり対立したりする様々なステークホルダー、とりわけ地域社会と学術研究とのかかわりの深化は、まさにセンターの掲げる超学際研究の目指すものでもある。減災社会部門としては、シンポジウムの開催のみならず、こうした観点から様々な分野の研究者と地域社会を巻き込んだ共同研究の可能性を探っていきたい。

 

 

 

 

 

 

 

写真1 講演(コメント)の様子

 

 

 

 

 

 

 

 

 

写真2 パネルディスカッションの様子