フューチャー・アース研究センターについて

 

目的

名古屋大学における世界をリードする地球環境研究・森林生態研究・持続可能な地域開発研究等の実績をベースに、国際学術プラットフォームであるフューチャー・アース(以下「FE」という。)の取組みに名古屋大学として組織的に参画し、FEに関連する地球規模課題の解決とSDGs(持続可能な開発目標)の達成に貢献する。FEの理念である、①問題解決志向、②効果的学際連携、③研究デザイン・研究生成における超学際、を具体的な研究課題において実践し、世界の学術界に範を示す。

FEに関する国内外の状況

FEは、国際科学者会議(ICSU)や国際社会科学評議会(ISSC)などが協同して2015年に始動した国際学術プラットフォームである。FEの国際事務局5つのうちの1つである日本ハブが日本学術会議および東京大学サスティナビリティ学連携研究機構に置かれ、アジア地域センターが総合地球環境学研究所に置かれている。 日本全体のFEの推進は、日本学術会議の中に置かれた推進委員会と、大学等の機関が加盟する日本コンソーシアムの両者が担ってきた。2017年9月に、日本コンソーシアムは「フューチャー・アース日本委員会」に改組され、FEのみならずSDGsの推進を担うことになった。

センター設置の必要性

名古屋大学では、環境学研究科附属持続的共発展教育研究センターが、FEが理想とする超学際(トランスディスシプリナリー)の活動をしており、実質的にFEを推進している。また、環境学研究科が日本コンソーシアムおよびその後継のFE日本委員会に加盟している。しかしながら、名古屋大学には FEに関する全学組織がなく、FEの活動が学外から見えにくい。名古屋大学で培われてきたこれまでのFE関連研究の蓄積をもとに、さらにFE研究を強化するとともに、研究活動を国内外に発信するための組織として、名古屋大学フューチャー・アース研究センターの設置が必要である。

設置手続き

既存の全学組織(学内コンソーシアム)である地球生命圏研究機構(21世紀COEの後継組織)を廃止し、新たにフューチャー・アース研究センターを設置する。これまで地球生命圏研究機構は、地球生命圏を研究対象とした自然科学を専攻する研究2者の連携組織として活動をおこなってきた。しかし、FEで目指しているのは、社会科学や人文学などの分野も含めた「学際」研究であり、さらには学術と社会の垣根を超えた「超学際」での協働である。そこで、地球生命圏研究機構の枠組みを拡大する必要があるため、これを廃止し、フューチャー・アース研究センターを設置する。

研究内容と研究組織

当面、FE日本委員会が、日本が取り組むべき研究課題として提示した、次の5課題に取り組む。

① 長期的視野に立った地球環境の持続性を支える技術・制度の策定
② 持続可能なアジアの都市および生活圏の構築
③ 生態系サービスの保全と人類の生存基盤の確保
④ 多発・集中する自然災害への対応と減災社会を見据えた世界ビジョンの策定
⑤ エネルギー・水・食料連環(ネクサス)問題の同時的解決

センターには、生命農学研究科、国際開発研究科、環境学研究科および宇宙地球環境研究所が参画する。上記の5課題のうち①~④に対応して以下の4部門を組織し、研究者を配置する。⑤の資源ネクサス問題については、総合地球環境学研究所と連携して研究する予定である。

①地球環境部門
観測・分析技術班、制度班
②都市・生活圏部門
③生態系サービス部門
④減災社会部門

現在進行中または計画中のプロジェクト

①地球環境部門

  • 東シベリアとモンゴルにおける永久凍土保全に向けた超学際研究
  • 高分解能古気候学と歴史・考古学の連携による気候変動に強い社会システムの探索
  • 世界気候エネルギー首長誓約および都市間協力プロジェクト

②都市・生活圏部門

  • 臨床環境学コンサルティングファーム
  • フューチャー・アースのための都市建築設計
  • 都市の木質化プロジェクト

③生態系サービス部門

  • 森林の生態系サービス機能を最大限に発揮させる森林管理システムの開発-IT技術による森林資源・環境測定の高度化と社会実装
  • 極端気象現象の影響下における森林生態系サービスの変化と適応策
  • 森林バイオマスの高度利用および木質系材料の高信頼性・高付加価値化
  • 持続可能な社会を構築するための木質バイオリファイナリー

④減災社会部門

  • 巨大地震災害の国際比較研究
  • 乾燥地災害学の体系化および持続可能な乾燥地域の社会形成に向けての国際連携研究

その他

センター設立後の事務は、当面の間、環境学研究科事務部が担当する。センターは、まず5年間(2018年4月1日から2023年3月31日まで)の設置を予定している。