公開シンポジウム2025開催のご報告

2025.12.18

名古屋大学フューチャー・アース研究センター 公開シンポジウム2025

「環境と防災」

 

名古屋大学フューチャー・アース研究センター

減災社会部門 高橋誠

 

1)趣旨:

近い将来の日本は、社会も環境も大きく変わることが予想されている。しかし、防災の問題は、学術的にも政策的にも、発災時の対応に焦点があり、長期的な社会や環境の変動とのかかわりは必ずしも意識されていない。このシンポジウムでは、文系・理系・工学系の研究者が、「環境」という大きな枠組みで災害・防災について語り、30年後を見すえた防災のあり方について議論する。

 

2)場所:

名古屋大学環境総合館レクチャーホール+オンライン配信(Zoom)

 

3)日時:

2025年12月6日(土)13:15~16:30

 

4)プログラム:

挨拶   名古屋大学フューチャー・アース研究センター長 檜山哲哉

趣旨説明 名古屋大学大学院環境学研究科教授 室井研二

講演

「気候変動下におけるハザード連鎖の解明に向けて」

名古屋大学大学院環境学研究科准教授 齋藤 仁

「減災社会に向けた治水政策転換の可能性」

名古屋大学大学院環境学研究科准教授 大野智彦

「流域治水/自然再興の実践に向けた自然・文化を基盤とする実践共同体の提案」

名古屋大学減災連携研究センター特任教授 田代 喬

パネルディスカッション

モデレーター:名古屋大学減災連携研究センター長 鷺谷 威

パネリスト:上記3名の講演者

総合司会:名古屋大学大学院環境学研究科教授 高橋 誠

 

5)共催:

名古屋大学大学院環境学研究科

名古屋大学減災連携研究センター

 

6)報告:

名古屋大学関係者のみならず、全国の大学・研究機関、地方自治体、民間企業などから112名(会場参加24名、オンライン参加88名、ただし講演者等を含む)の方々にご参加いただき、シンポジウムは盛会となった。檜山哲哉センター長による挨拶と国際的なFuture Earthの枠組みや、名古屋大学フューチャー・アース研究センターの取り組みについての紹介の後、名古屋大学の室井研二教授によるシンポジウムの趣旨説明があり、名古屋大学から3件の講演が各30分程度おこなわれた。パネルディスカッションでは、それぞれ鷺谷威名古屋大学減災連携研究センター長をモデレーターに、3名の講演者をパネリストにして、フロアやオンラインからの質問・コメントに応答するかたちで、とりわけ水災害や土砂災害、流域治水政策に焦点をおきながら、大きく以下の3点に関して討論をおこなった。

 

  • 近い将来において環境と社会にどのような変動があるか、また、とりわけ両者の関連に着目すると、それらは科学的にどのようにとらえられるか。
  • 現在の防災・環境政策がどのようにして成り立ち、なぜ環境と防災の問題が分離しがちなのか、両者をつなげるためにどのような環境ガバナンスがありうるか。
  • 環境変動にかかわる科学的な研究成果はどのようにして防災対策の現場に活かされるか、また、防災の問題は環境研究にどのようにフィードバックされうるか。

 

7)総括:

これまで防災の問題に関してはイベントフォーカス的な研究が多く、緊急対応や被害抑止に偏った防災対策が中心であった。一方、環境変動、とりわけ気候変動に関する研究は、自然災害の激甚化に関する指摘はあるものの、どちらかと言うと緩和策に焦点があり、地域固有の文化的背景に立脚した適応策についてはほとんど言及されていなかった。このシンポジウムは、環境研究と防災研究が同じ現象を対象としながらも、環境の問題と防災の問題が学術的・政策的に分離している現状と、両者の問題をつなげて考える必要性を改めて意識するよい機会となった。このシンポジウムで議論された問題はすぐに結論が出せるものではないが、減災社会をめぐる統合研究の出発点になったのではないかと思われる。

環境研究と防災研究をつなぐためには、様々な学術分野間、また、学術と社会との間における対話が必要であり、このシンポジウムをとおして、そうした対話のための概念的なフレームとして、Future Earthの枠組みが想像以上に寄与することを確認できた。

また、名古屋大学では、環境や防災にかかわる研究者がたくさん在籍しているが、同じ土俵で議論する機会はこれまでほとんど無かった。2025年度から、名古屋大学減災連携研究センターが名古屋大学フューチャー・アース研究センターに新たに参画することになり、先ずは、公開シンポジウムというかたちで、その成果を出すことができた。名古屋大学フューチャー・アース研究センターは、このようなシンポジウムの開催を通して、様々なステークホルダーとの対話の場を継続的に提供することが期待される。今後は、センターに参画していない部局、あるいは、東海国立大学機構の傘下にある岐阜大学にも参加者を広げていきたいと考えている。